東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)58号 判決
一 請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。
原告の主張は、要するに、審決が認定している「フレツクス」なる称呼は、本願商標からも引用商標からも生じないから、審決の判断は誤りである、というのである。
本願商標は、別紙第一のとおりの構成のものであるところ、これによれば、本願商標は、図形と文字との組合せよりなり、その図形部分は、その表わすところのものが必ずしも明らかではなく、附飾的なものとみることもありうるから、これが文字部分と常に一体のものとして認識されるとは認められない。したがつて、本願商標においては、その構成中、読み易く、親しみ易い文字部分が看者の注意を惹くとともに、独立しても、自他商品の識別標識としての機能を果すものということができる。そして、右文字部分のうち、「nippon」と「FLEX」の各文字部分は、書体及び大きさを著しく異にし、しかも、上下二段に分離して表示されているうえに、「FLEX」の文字はそれ自体独立しても自他商品の識別標識としての機能を果すことができるものと認められるから、取引者、需要者が本願商標に接するときは、この「FLEX」の文字部分のみを捉えて、これより生ずる「フレツクス」の称呼をもつて取引に当る場合も決して少くはなく、「フレツクス」の称呼も生ずると認めるのが経験則上相当である。
原告は、本願商標が図形と文字との組合せからなることを指摘して、この商標からは「ケーブル印のニツポンフレツクス」の称呼しか生じない旨主張するけれども、その主張は前述の理由に徴して採用できない。
また、原告は、本願商標中の「nippon」の文字部分は製品の産地表示として使用されているものでないことが構成上明らかであるから、単なる「フレツクス」の称呼は生じない旨主張するけれども、「nippon」の文字それ自体は独立して自他商品の識別標識となりうるものではなく、前述のとおり、「FLEX」の文字はそれ自体独立してもその機能を果すことができると認められるから、原告の主張は採用できない。
原告の提出する甲第四号証ないし第九号証も、以上の判断を妨げるものではなく、他に、この判断を覆すに足りる証拠はない。
引用商標が別紙第二のとおりの構成のものであることは、原告の自認するところである。これによれば、引用商標は、数字「3」に「FLEX」の欧文字をハイフオンで結合してなるものであるが、一般に、このような数字は商品の種別又は型式を表わす記号としても屡々使用されるものであるから、「FLEX」の部分が、この商標において自他商品の識別標識としての機能を果すことも少なくないといいうべきことは経験則上明らかである。そして、「FLEX」の文字から「フレツクス」の称呼を生ずることはいうまでもないから、引用商標からは「フレツクス」の称呼をも生ずるということができる。
原告は、引用商標の構成を指摘して、この商標からは「スリーフレツクス」又は「数字フレツクス」の称呼しか生じない旨主張するけれども、前記の理由に徴して採用できない。甲第一〇号証ないし第一七号証も右の判断を左右するに足りない。
三 そうすれば、審決の取消を求める原告の主張はすべて理由がないので、本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
別紙第一
<省略>
別紙第二
<省略>